取り組みの事例
設備・製品カタログとWEBページを、ほぼ自動でつくる流れ
ふつう、この種のカタログとWEBページを作るには、社内にデザイナーやWEB制作者がいなければ外部に頼むしかありません。点数が多いほど費用は膨らみます。そこで、この一連の流れを「人にしかできないこと」と「AIに任せられること」に分けるところから始めました。
- 全工程
- 25工程
- 初回の人間の工程
- 11工程
- 2回目以降の人間の工程
- 6工程
STEP 1
素材を集める
現場に行って、話を聞き、撮る
5工程
人間とAIが協働作業をするとき、質の高い素材からは、質の高い結果が生まれます。反対に、適当な素材しか用意せず、AIに丸投げをすると、誰でも作れるような価値の低い結果しか得られません。この素材収集こそ、人間が労力をかける工程です。
では始めましょう。
PRしたい設備・製品を選ぶ
まずは、何を世の中にPRしたいのか、主役を決めましょう。対象となる設備と製品を選びます。複数ある場合は一覧にしましょう。数ある生産設備と製品の中で何を優先的にPRするのかの最終判断は人間にしかできません。
現場担当者への質問リストを作る
ここはAIに適切な指示をする事で、毎回人間が手作業で質問リストをつくる手間を省くことができます。この工程で重要なのは、「なぜ、その質問をするのか?」という背景と、質問の作法をAIに学習させる事です。闇雲に「質問を10個考えて」ではダメです。
この情報を届けたい相手は誰なのか?どのような時にこの情報を使うのか?そのような背景情報を設定します。そして、最終的にどんな情報を現場の担当者から引き出したいかというゴールから逆算して、設問を設計します。
- これはどんな設備か?
- どんな加工をするのか?
- どのような原理で加工されるのか?
- どのような製品ができるのか?
- 得意な加工と不得意な加工はなにか?
- 他社にはまねしにくい強みは何か?
- 加工の精度は?
このように、相手が知りたいと思う事から逆算して質問を設計します。
ここでは、AIが「相手」と「背景」と「最終的に何をつくるか」から判断して、適切な質問を毎回生成するように指示を工夫します。
最終的に、AIが提案した質問リストに対して人間が補足と修正を加える事で、質問リストが完成します。
撮影する対象のリストを作る
ここでもAIが活躍します。どんな設備あるいは製品をPRするかという設定情報と、背景、そして相手が明確であれば、「どこの写真が必要か?」という事は自ずと導き出されます。AIに「もしあなたが顧客なら、どの部分が気になるか?文章だけでは想像しにくいところはどこか?」を考えさせます。こうしてAIが提案をしたリストに対して、人間が補足と修正を加える事で、撮影リストが完成します。撮影リストがある事の利点は、現場で闇雲に写真を撮らなくてよくなる事です。まず、リストの指示通りに撮影すれば、後の工程で、リストと写真を一緒に渡せば、自動的に「その写真がなんなのか?」という情報が画像ファイルに付与され、それは、さらに後の工程で画像を言葉で検索する時に大いに役立ちます。
担当者の話を動画で録る
質問リストが手元にあれば、あとは現場で話を聞くだけです。ここは人間にしかできない工程です。
大事なのは、原稿を用意して立派に喋ろうとしない事です。言い間違えても、話が前後しても、後の工程でAIが整えます。それよりも、その設備を毎日触っている人が、普段どおりの言葉で話す方がずっと価値があります。「ここが難しい」「昔はこうやっていた」といった、質問リストに無い話が出てきたら、それは止めずに聞いてください。そういう話ほど、あとで他社にはまねできない強みとして効いてきます。
なぜ音声ではなく動画で録るのか。現物を指差しながら「この部分が」と説明した時、音声だけでは何を指したのか分からなくなるからです。手つき、機械の音、現場の様子。その場に居なかった人が後から見て分かるように、映像ごと残しておきます。
設備と製品を撮る
撮影リストの通りに、設備と製品を撮ります。
ここで気をつけたいのは、きれいに撮ろうとしすぎない事です。広告写真のように整えた一枚より、実際の姿が分かる写真の方が、この用途では役に立ちます。加工面の質感、機械の大きさが分かる引きの一枚、動いている様子。現場の人が「こんなの当たり前だから」と思っている光景こそ、外から見た人には珍しく、そして知りたい情報です。
撮った時点では、これが後でどう使われるかを考える必要はありません。リストに沿って撮っておけば、どの写真をどこに置くかは、後の工程が決めてくれます。
STEP 2
素材を整理する
撮った物を、あとで探せる状態にする
2工程
撮っただけの写真と動画は、まだ素材ではありません。フォルダに入った大量のファイルは、時間が経つほど「これは何を撮ったものだったか」が分からなくなっていきます。
この段でやる事は、撮った物に意味を持たせ、あとから探せる状態にする事です。地味な工程ですが、ここを飛ばすと、後の工程でAIに「この設備の加工面の写真を出して」と頼んでも、何も出てきません。
写真・動画に説明を付ける
一つひとつの写真と動画に、「これは何を撮ったものか」を一言添えます。
これは人間の工程です。なぜなら、その写真を撮った本人にしか分からない事が多いからです。AIは映っている物の形は分かっても、それがどの設備のどの部分で、なぜそこを撮ったのかまでは分かりません。
ただし、ここでも撮影リストが効いてきます。リストに沿って撮っていれば、「リストの3番目の指示で撮った写真」という対応が付くので、説明を一から書く必要はなく、リストの文言を確かめて直す作業で済みます。
素材を台帳に並べて検索できるようにする
説明の付いた素材を、一覧できる台帳の形に整えます。ここは自動処理の担当です。
やっている事は、ファイルとその説明を一件ずつ結び付けて、後から言葉で引ける状態にしておく事です。こうしておくと、後の工程で「この設備の加工面が分かる写真」と指定した時に、人間がフォルダを開いて探すのではなく、台帳の側から該当する素材が返ってきます。
写真が数十枚なら手作業でも何とかなります。しかし設備と製品が増えれば、素材はすぐに数百、数千になります。その規模になると、探す時間の方が作る時間より長くなる。それを避けるための工程です。
STEP 3
文章を書く
話した言葉から、PR文の部品をつくる
4工程
ここからは言葉の工程です。
現場の担当者が話した言葉は、そのままではPR文になりません。かといって、AIに「かっこいい紹介文を書いて」と頼めば、どこかで見たような、中身の無い文章が返ってきます。
やるべき事は、話した言葉を捨てずに、使える形に整える事です。そのために、まず「どんな部品が要るのか」を決めるところから始めます。
PR文の「部品」の型を決める
PR文を一本の文章として書こうとすると、毎回ゼロからの作業になります。そうではなく、あらかじめ「この設備について、どういう項目が要るか」を決めておきます。
- これはどんな設備か
- どんな加工ができるか
- どのような原理で加工されるか
- 製品の加工精度は
- 加工事例は
- どのような強み、独自性があるか
この項目立てが、質問リストの設計ともつながっています。聞く事と、書く事と、載せる事を同じ型で揃えておくと、工程の間で情報が落ちません。
この型を決めるのは最初の一度だけです。二件目からは、同じ型に沿って中身が入っていきます。
取材動画の声を文字にして、部品に書き起こす
ここでは、動画から音声を分離するプログラムと、分離した音声をテキストとして文字起こしするAI技術が活躍します。通常、文字起こしソフトを使って動画を読み込み、文字起こしをするプロセスを、複数の処理プログラムとして連結させます。こうする事で、動画をインプットすれば、音声分離と文字起こしが自動実行され、文字起こしの内容を人間がチェックする工程へ回してくれます。重要なのは、1つの処理をするたびに、別々のソフトウェアを立ち上げてインポートして、処理して保存してエクスポートして、さらにそのファイルを自分で名前を付けて管理し、フォルダが散らかってどこに行ったかが分からなくなるという状態を回避できる事です。ルール通りに厳格に処理し、保存し、あとから探せるように管理する部分は、AIと自動プログラム(主にPythonというプログラム言語を使います)に任せるのです。
出来た文章に赤入れする
AIが書いた文章を、人間が画面上で読んで直します。
ここを省いてはいけません。AIの文章は、読むと「それらしく」できています。しかし、話し手が言っていない事が混ざったり、数値が少しずれたり、現場では使わない言い回しになったりする事があります。文章としてもっともらしいほど、間違いは見つけにくくなります。
見るべきなのは、うまい表現かどうかではなく、事実として正しいかどうかです。
- 話し手が言っていない事が足されていないか
- 数値や条件が変わっていないか
- 現場で実際に使う言葉になっているか
赤入れの作業そのものは、画面上で直接直せるようにしてあります。別のファイルに修正指示を書いて渡す、というやり方はしません。直した内容が、そのまま次の工程に渡る形にしておきます。
確定した文章を台帳に登録する
人間が確定させた文章を、素材の台帳に登録します。ここは自動処理の担当です。
この工程の意味は、一度書いた文章が、次から使い回せる部品になる事です。同じ設備が別のカタログにも載る、WEBページにも載る、展示会の資料にも使う。そのたびに書き直していては、点数が増えるほど手間が増えていきます。
文章を台帳に置いておけば、どの出口からも同じ文章を引けます。そして直す時も、台帳の一箇所を直せば、そこから作られる物すべてに反映されます。
STEP 4
カタログの型をつくる
印刷物の見た目を、一度だけ決める
3工程
ここから二つの段は、見た目を決める工程です。
大事なのは、これが「最初の一度だけ」の工程だという事です。一件ごとにデザインを考えるのではなく、中身を差し替えれば何冊分でも組める型を、先に作ってしまいます。
カタログの下書きを手で描く
紙に、手でラフを描きます。
きれいに描く必要はありません。「見開きの左に大きく設備の写真、右に説明、下に加工事例を三つ」という程度の、並べ方が分かる下書きで十分です。
なぜ人間が描くのか。どの情報を大きく見せ、どれを小さく添えるかは、その会社が何を強みとして押し出したいかの判断だからです。これは仕上がりの好みの問題ではなく、経営の判断に近い部分です。ここだけは、AIに委ねずに人間が決めます。
手描きから印刷用のデザインを起こす
手描きのラフを、印刷に耐えるレイアウトに起こします。ここはAIの担当です。
印刷物には、長く使われてきた作法があります。本文の文字の大きさ、行の間隔、余白の取り方、裁ち落としの扱い、書体の組み合わせ。これらは感覚ではなく、ほぼ規則として言葉にできるものです。規則として言葉にできる仕事は、AIが引き受けられます。
人間が「こう並べたい」と示し、AIが「その並べ方を、印刷の作法どおりに整える」。この分担にすると、デザインの経験が社内に無くても、読みやすい紙面が組めるようになります。
デザインを再利用できる型にする
起こしたデザインを、中身を差し替えられる型にします。
一枚の完成データではなく、「ここに設備名が入る」「ここに写真が三枚入る」という枠の集まりとして持たせる、という事です。こうしておくと、二件目からは中身を流し込むだけで同じ品質の紙面が出てきます。
点数が多い会社ほど、ここが効きます。設備が三十台あれば、三十回デザインするのか、一度型を作って三十回流し込むのか。かかる費用と時間が桁で変わってきます。
STEP 5
WEBの型をつくる
サイトの見た目を、一度だけ決める
4工程
紙と同じ事を、画面についても行います。
紙と違うのは、画面には決まったサイズが無い事です。大きなモニターでも、スマートフォンでも同じ内容が読めなければなりません。そのぶん、規則の作り方が少し違ってきます。
手本にしたいサイトを集める
「こういう雰囲気にしたい」と思うサイトを、実例として持ち寄ります。
言葉で「かっこよく」「信頼感のある感じで」と伝えても、人によって思い浮かべる物が違います。実例を三つも並べれば、その会社が何を良いと思っているのかが、はっきり見えてきます。
これは人間の工程です。好みを決めるのは人間にしかできませんし、ここで選んだものが、この先すべての面の基準になります。
手本の特徴を分析して見た目の規則にする
集めた実例を、AIが分析します。
見ているのは、雰囲気ではなく具体的な値です。使われている色は何色で、どこにどう使い分けられているか。書体は何で、見出しと本文でどれくらい大きさが違うか。余白はどれくらい取られているか。
「なんとなくおしゃれ」を、「この色をここに、この間隔で」という規則の一覧に翻訳する工程です。規則の形になっていれば、あとは機械が何百ページでも同じ基準で組めます。
画面の並びを手で描く
紙のときと同じように、画面の並びも手で描きます。
見出しをどこに置くか。本文はどれくらいの幅で読ませるか。写真は何枚並べるか。動画はどこに埋め込むか。
紙との違いは、「画面が狭くなった時にどうなるか」まで決めておく事です。横に三枚並んだ写真は、スマートフォンでは縦に積むのか、横に流すのか。ここを決めておかないと、後で機械が勝手に決めた並びになります。
手本と手描きを合わせてWEBの型にする
見た目の規則と、画面の並びを、一つにまとめます。
紙の時と同じで、出来上がるのは完成したページではなく、中身を差し替えられる型です。「ここに設備名」「ここに写真の一覧」「ここに動画」という枠が決まっていて、どの枠にどの色と大きさを使うかは、規則の側が決めている。
この二つが揃った時点で、準備は終わりです。ここから先は、設備が何台増えても、同じ型に流し込むだけになります。
STEP 6
WEBページを作って公開する
素材 × WEBの型 → 公開されたページ
3工程
ここまでの工程で、素材の台帳と、二つの型が揃いました。
あとは組み合わせるだけです。この段からは、人がやる事はぐっと減ります。
素材をWEBの型に流し込んでページを作る
台帳にある写真と文章を、WEBの型に流し込みます。自動処理の担当です。
どの写真をどこに置くかは、台帳の説明と型の枠の対応で決まります。「この設備の加工面が分かる写真」という枠には、その条件に合う素材が入ります。人間がファイルを選んで貼り付ける作業は、ここでは発生しません。
設備が三十台あっても、この処理は同じように三十回走ります。一台目と三十台目で品質が落ちないのは、人ではなく決められた手順が組んでいるからです。
WEBの仕上がりを確かめて直す
出来上がった画面を、人間が見て確かめます。
自動で組んだ物は、たいてい八割か九割は正しく仕上がっています。残りを見つけるのが、この工程です。
- 写真と説明の組み合わせが入れ替わっていないか
- 専門用語の表記が揃っているか
- その会社として、出したくない情報が写り込んでいないか
特に最後の一つは、機械には判断できません。背景に映り込んだ他社の部品、まだ公表していない設備、社内の掲示物。「これは出さない」という判断は、その会社の人にしかできない仕事です。
直したい所があれば、その場で直せるようにしてあります。直した内容は素材の台帳に返るので、同じ間違いが次のページで繰り返される事はありません。
WEBページを公開する
確認の済んだページを、誰でも見られる状態にします。自動処理の担当です。
ここを自動にしておく理由は、公開の作業に人の手が入るほど、事故が起きやすいからです。古いファイルを上げてしまう、一部だけ差し替え忘れる、公開したつもりが反映されていない。どれも、手作業で繰り返す限りいつか起きます。
確認したものが、そのまま公開される。その一本道にしておくのが、いちばん安全です。
STEP 7
印刷用データを作る
素材 × カタログの型 → 印刷用PDF
4工程
WEBページと同じ素材から、今度は紙を作ります。
作り直すのではありません。同じ台帳から、別の型に流し込むだけです。だからWEBと紙で、書いてある事が食い違うという事が起きません。
素材をカタログの型に流し込んでPDFを作る
台帳の写真と文章を、カタログの型に流し込み、印刷用のPDFにします。自動処理の担当です。
画面と紙では、必要になる条件が違います。紙は色の表し方が違いますし、写真は画面用より細かい解像度が要ります。文字も、画面では読めても紙では小さすぎる、という事が起きます。
こうした違いは、そのつど気をつけるのではなく、型と処理の側に決まりとして持たせておきます。毎回人が確認する事にすると、いつか忘れるからです。
印刷物の仕上がりを確かめて直す
組み上がった紙面を、人間が確かめます。
画面で見た時と、紙になった時では、印象が変わる事があります。写真が思ったより暗い、文字が詰まって見える、見開きにした時に大事な部分が中央の折り目に来てしまう。
ここでも判断の基準は同じです。きれいかどうかではなく、伝えたい事が伝わる形になっているか。そして、出してはいけない物が載っていないか。
公開したURLをQRコードにして紙に載せる
先に公開したWEBページのURLを、QRコードにして紙面に載せます。自動処理の担当です。
紙には紙の強みがあります。展示会で手渡せる、机の上に置いておける、決裁の場に持っていける。一方で、動きは見せられませんし、情報を後から差し替える事もできません。
そこを、QRコードでつなぎます。カタログを見た人が、その場で加工の様子を動画で見られる。紙とWEBの、それぞれの得意な所だけを使う形です。
この工程が自動である事に意味があります。URLを手で打ち直せば、いつか打ち間違えます。公開したページのURLが、そのままコードになる。だから、載っているQRコードは必ず生きています。
印刷用データが完成する
そのまま印刷会社に渡せる状態のデータが出来上がります。
ここまでで、設備一台分のカタログ紙面とWEBページが揃いました。二台目からは、この段のうち人が動くのは、取材と撮影、写真への説明付け、そして二回の確認だけです。
最初に型を作る手間はかかります。しかし、その手間は一度きりです。点数が多い会社ほど、二台目からの差が積み上がっていきます。
残ったもの
設備・製品が1件増えるたびに、
人がやるのはこの6つだけ。
人の手が要るのは25工程のうち11工程。うち5工程は最初の1回だけの準備なので、設備・製品が1件増えるたびに人がやるのは6工程だけ。
ご相談
自社の設備・製品でも同じことができるか、確かめませんか。
扱う点数や素材の状態を伺えば、どこまで自動化できるかをお伝えできます。